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PASSIONEER


À la recherche du temps perdu ― 祖母の遺産
パリにいた時から交流が続いている友人たちとの会食に祖母の帷子(かたびら、裏地のない麻の単衣)を着ようとしたら、あらびっくり!お尻部分が破れてしまった。 居敷当ても付いていないほんとの常着だから、ごく簡単にお仕立てしてある。とうとう力尽きたのか。 解かれた帷子、絡み合う七十年分の縫い糸 帷子を片手に、しばし祖母に想いをよせる。 なぜなら。この帷子は、祖母が自分の娘が嫁ぐ時に持たせたものだから。嫁入り道具の一つ。祖母の手からなるお仕立てだ。それはそれは丁寧に仕立ててある。 今までしっかりみたことも無かったが、改めて祖母の手が非常に美しいことに感動する。三つ折りぐけは細く、運針も美しい。首周りには汗とりが縫い付けられている。よく見るとあちこち補修の跡が見える。 日にかざすと、千鳥が波に遊ぶ姿がくっきりと浮かぶ。 和服は仕立て直しが前提の服だ。それを自ら証明しよう。 洗われ、干される帷子の生地 私は七十年以上はとうに経っているであろう帷子を、仕立て直す決意をした。 You may never wear a kimono. But you can wear

Hamanaka Akiko
2 日前読了時間: 1分


À la recherche du temps perdu ― 黒の麻、波に千鳥
祖母が遺した波に千鳥。70年の時を経て、今は私が纏う。 母が嫁ぐ時に花嫁道具のひとつとして持たされたという、麻の着物。 普段着だ。ところどころにフシが見られることから、けっして高価なものではないことがうかがえる。 夏のひとときを新婚夫婦で過ごせるよう、男ものの上布と共に持たされたらしい。 袖の丸みはふんわりとして、あくまでも薄く、陽にかざすと青空が透けて見える。 千鳥が波に遊んでいる。 風が吹けば波しぶきがおこる。 私が歩けば千鳥が舞う。 着物は着て歩いて初めて息をする。 祖母が着ていたものかもしれない。 袖と身頃に継ぎがしてある。 ざっくばらんに。 祖母が自分で繕ったのだろう。 母はこの千鳥を長い間行李からださなかった。 というか、一度も袖を通さなかった。 父も、自分のために誂えられた上布の存在を知らずに過ごしたようだ。 現在、この麻の着物はわたしが可愛がっている。 波に千鳥は 世間の荒波を「一緒に乗り越えていく」という意味があり、 夫婦円満や家内安全の象徴とされている。 祖母は嫁ぐ娘に幸せになってほしいと 思いをのせて、波に千鳥をもたせたのだ

Hamanaka Akiko
8月7日読了時間: 2分
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