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PASSIONEER


À la recherche du temps perdu/Hajitomi, structural silence存在が作者から離れるとき
自ートには、和裁の技術がふんだんに用いられている。実際に着物を着なくても、着物を仕立てる技術を身にまとうことは可能である。このコートは、そのことを物語っている。 表地に用いたのは置賜紬。紬は先染めの糸で織られるため表裏の区別がなく、単衣のコートには理想的な素材である。多少の雨に濡れても染みになりにくく、縮むこともない。 単衣のコートとして成立させるためには、裾に広がりが必要になる。洋服であればAラインに裁断するところだが、着物は直線裁ちで仕立てられるため、その方法は取らない。代わりに「まち」を入れて裾の広がりをつくる。 さらに、長い着丈を落ち着かせるため、裾には真綿を入れている。現在では本物の真綿を用いることは少なく、羽二重やさらしを薄く挟む程度の仕立てがほとんどである。しかしこのJFKコートには、真綿をたっぷりと詰めてある。裾を軽くつまむと、そのふっくらとした感触がはっきりとわかる。 張りのある紬の生地の中に、ふんわりとした柔らかさが潜んでいる。空気を含んだ真綿が長い着丈を静かに落ち着かせ、歩くたびに裾が風に揺れる。 まるで着物のように。 なん

Hamanaka Akiko
3月12日読了時間: 1分


À la recherche du temps perdu/形態の必然/衣服が存在を始める瞬間
衣服の境界が閉じられた瞬間、存在が始まる。 衣服は、裁断された瞬間に生まれるのではない。縫われた瞬間でもない。形になったときでさえ、それはまだ完全には存在していない。 衣服が存在を始めるのは、動き出すことが可能になった瞬間である。 和裁において、その境界を決定する工程のひとつが「フキ出し」である。表地と裏地を合わせ、縁をわずかに調整しながら、針を進めてゆく。 このとき行われているのは単なる始末ではない。それは、二つの層が互いの位置を受け入れ、衣服としての輪郭を確定する作業である。 この工程によって、衣服の動きは決定される。 針は布を貫通するが、破壊はしない。絹糸は布を固定するが、拘束はしない。 すべては、将来解かれることを前提として行われている。 和裁の縫いは、常に可逆性を内包している。それゆえ、この瞬間は完成ではなく、存在の開始である。 フキに詰められるのは真綿である。繭玉をひとつひとつ手作業で広げ、一枚の層へとする。それを細く伸ばし、裾の内部に均等に置いてゆく。 真綿は空気を含み、呼吸する素材である。重さを支えると同時に、動きを妨げない。.

Hamanaka Akiko
3月5日読了時間: 2分
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