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PASSIONEER


À la recherche du temps perdu / 洋装で見れば、緋色のパンツにド紫のジャケット
緋袴は名古屋帯となり、今もAkikoの腰に巻かれる。祖母から母へ、そして私へ。 この緋色の帯は曾祖母の緋袴を仕立て直したものであり、今も健在だ。 祖母から母へ、そして私の手元に来たときは母の名古屋帯になっていた。祖母が母のために名古屋帯に仕立て直したらしい。 体格のいいわたしには少々短いが背中に手が回る限り締められそうだ。 この宮中で穿く女性用の袴、実は世界に類を見ない仕立て方から成り立っている。緋袴の色に目を奪われて仕立て方までなかなか思いが行きつかないかもしれないが、紐解くとそれはそれは摩訶不思議な仕立て方法になっている。 正式には長袴と呼ばれる。それまでは足首までだった袴が、奈良時代からの石畳の立礼から寝殿造りの座礼に変化したのが影響していると考えられる。 構成は長方形襠布を用いた特殊なもので、その縫製は女袴の他には見られない。材料は主に紅の平絹。あるいは綾だが、曾祖母の袴は平織だ。 引きずって歩いたり、畳の上で擦れたりすることが考慮されているのだろう、非常にしっかりとした密度の高い平絹である。 滑らないので帯として締めるには非常にいい

Hamanaka Akiko
4月23日読了時間: 2分


À la recherche du temps perdu / 眠り姫、100年の目覚め
1928年、昭和天皇御大典。曾祖母はしきたりに則り小袿姿で参列した。この衣装が、100年の旅を始める。 1928年、昭和天皇御大典に参列した際の曾祖父母の写真。曾祖母は宮中参列のしきたりに則り小袿(こうちぎ)姿で参列。嫁として嫁いだ祖母は、なんと戦後の食糧不足の時期にもこの衣装だけは売らずに手元に残した。姑が生きていたからという理由があるだろうが、それにしても誉だったことがよくわかる。 1958年、曾祖母の孫にあたる私の母が嫁ぐことが決まる。祖母はなんと、この小袿一式を嫁入り道具のひとつとして自ら布団に仕立てた。小袿だから何枚も重ね着をしているのだがそれらをすべて解き、一枚の布に戻した。これも和裁のなせる技。解いて仕立て直しができる。着物ではなく、布団に!祖母は嫁ぐ娘のために布団をこしらえ娘に持たせた。ところが。父と母はこの布団で寝ることはなかった。農家出身の父が、おそれおおいと嫌がったらしい。かくして、布団に変わった小袿は押し入れの奥で長い長い眠りにつく。70年を超す長い長い眠りから目覚めた眠り姫は、今度は異なる相手のために美しさを見せることに

Hamanaka Akiko
4月9日読了時間: 2分


À la recherche du temps perdu / 着物は完成しない
解いて、広げて、時間をかけて考える。誰の袖を通るのか。90歳になった母のもとへ帰るのか。 1950年代の母の振袖を2010年代に娘の成人式の着物にするため染め変えた。深い深い海の底の色にしたため、金彩のみが浮きだった。神秘的な外見が、娘の未知なる未来を暗示するかのようで、不安や好奇心をかきたてた。 その、染め変えた振袖ももう、着られなくなった。そう、着物は姿かたちをその時々で変えて生まれ変わる。直線裁ちだからこそできる生地の生命。絶えることのない命。着物はただ保管して100年生きるのではない。姿を変えて我々の前に現れる。100年前には想像もしなかったであろう姿になることもある。 娘は振袖はもう着られない。着物には、伝統的な規則がある。この神秘的な深い青をどう活かすべきか。解いて、広げて、時間をかけて考える。 誰の袖を通るのか。90歳になった母のもとへ帰るのか。 ハサミを入れるのはまだ先だ。 そしてもう一枚。赤い小紋も、その役目を終えようとしている。 さあ、この子はどんな形になり、どこへお嫁に行くのやら。 冬は終わりではない。次の命への静かな準備.

Hamanaka Akiko
4月2日読了時間: 1分


À la recherche du temps perdu/色は変わり、命はつながる
手描きの金彩が白地の宮殿をきらめかせていた——絹に織り込まれたバロックの輝き。 母の成人式の写真 このころはロココ調やらバロック調が着物業界で流行っていたらしい。 戦後の復興、追いつけ、追い越せの風潮と西洋へのとてつもない憧れがデザインに現れている。 母の成人式の着物は白地にエンタシスの柱、宮殿が鮮やかに描かれていたらしい。そして手描きの金彩がふんだんに使われ、宮殿がよりいっそうきらびやかに輝く。 母はその着物で父とのお見合いにでかけ、結婚式でお色直しにこの着物に袖を通した。 春の宴のように華やいだその日、白地の宮殿はひときわ輝いていたに違いない。 いうなれば、父との出会いを一緒に潜り抜けてきた相棒である。 着物は洋装と違い、年と共に色や柄に制限がかかる。 最近は洋服文化が浸透し派手な色目の着物をきることも可能になってきたが、さすがに成人式の振袖を60歳で着ることははばかれる。かといって、捨てるにはおしい。 母の人生を一緒に歩んできた時間の証言者なのだから。 和服は仕立て直しが前提の衣類である。 この大前提の掟にのっとり、わたしは娘の成人式の着物

Hamanaka Akiko
3月26日読了時間: 3分


À la recherche du temps perdu/なぜ直線裁ちの衣服は100年後も着られるのか
直線裁ちは、解体と再生を可能にする構造として2000年続いている。 和服は仕立て直しが前提の衣服である。家族が多かった時代、子供が成長すれば着物は解かれ、洗われ、再び仕立て直された。袖が傷めば、その部分を外し、別の布を組み合わせ、新たな衣服として生まれ変わる。この相互関係を延々と繋ぎ続ける構造こそが、直線裁の本質である。和裁の世界では繰り回しと呼ばれるこの営みは、限られた資源の中で絹という貴重な素材を慈しみ、継承するための合理的な方法であった。 直線裁の着物は、8枚の布から構成されている。これらの布は解いて洗うことで、再び元の反物の形へ戻ることができる。つまり、着物は完成された最終形ではなく、常に再構築される可能性を内包した構造体なのである。これは紬に限らず、柔らかものと呼ばれる染めの着物にも共通する。元来、着物は水洗いが可能であり、仕立て直しを繰り返すことを前提として存在している。 直線裁が2000年近く維持されてきた理由は、単なる伝統の継承ではない。それは合理性の結果である。反物という規格化された布を無駄なく使用し、誰の身体にも適応し、そして

Hamanaka Akiko
2月26日読了時間: 3分


À la recherche du temps perdu / 有松鳴海絞りの浴衣と和裁文化|昭和初期の木綿と藍の記憶
祖母が日常着として着ていた有松鳴海絞りの浴衣。洗われながら時間を残している。 昭和初期、祖母が着ていた浴衣。明治初期以降、化学染料が広く普及し、本藍のように手間のかかる染めは急速に姿を消していった。この一枚も例外ではない。化学染料による濃紺。お出かけ着ではなく、常着。祖母は湯上がりに袖を通していた。 襟まわりには、今では考えられないほど厚い晒の汗取り。まさに生活の一部だった。 木綿の浴衣が庶民に広く行き渡ったのは江戸時代後期。木綿と藍は抜群に相性がよく、丈夫で洗えて、夏に適していた。絹は夢の衣服。庶民にとっては麻か木綿。その木綿に「絞り」という技術を加えることで、手間をかけたという誇りと、美しさと、機能性を同時に手に入れた。 なぜ浴衣になると絞りなのか。 代表格は有松鳴海の絞り。江戸時代、街道を行き交う旅人に豆絞りの手拭いを売ったことが始まりとされる。老舗の竹田嘉兵衛商店には、徳川家茂が、妻である和宮への土産として求めたという記録も残る。絞りという技法自体は、はるか古代、大和の時代から続く技術である。 絞りの浴衣を着ると、肌に凹凸を感じる。布と体

Hamanaka Akiko
2月19日読了時間: 2分


À la recherche du temps perdu 衣の構造について
衣服の構造は、見た目よりも先に、考え方を表す。 和裁とは、着物とは、仕立て直しを前提とした衣服である。 最初から「一度きり」を想定していない。その思想が、構造のすべてに組み込まれている。 ミシンで縫わない理由は、懐古でも、手仕事礼賛でもない。針目を残さないためである。絹針と手縫い針で入れられた縫い目は、解いて洗うと、不思議なほど跡を残さない。布は元の状態に近づき、繊維は静かに塞がる。 だからこそ、異なる身体、異なる時代に合わせて、再び仕立て直すことができる。同じ布が、別の寸法を受け入れる。その余地を最初から失っていない。 多くの衣服は、完成形を目標に設計される。最終的にどう見えるか、どう見せるかが先にあり、そのために布が切られる。一方で、和裁の構造は逆を向いている。布がまず存在し、その布が、何度関係を結び直せるかが考えられる。 直線で裁たれた布は、身体の曲線を固定しない。歩くとき、座るとき、年月を経たとき。布はその都度、別の位置に落ち着く。その柔軟さは、未完成さではなく、時間を受け入れるための構造である。 親の着物に手を入れるとき、向き合う

Hamanaka Akiko
1月23日読了時間: 2分


アンティーク訪問着の仕立て直しで蘇る美しさー思い出を未来へつなぐ一枚
アンティークの訪問着は、現代の着物にはない色柄や風合いが魅力です。しかし、時を経て寸法が合わなくなったり、生地にゆるみが出てきたりすることも。そんな時におすすめなのが「仕立て直し」です。大切に受け継がれてきた訪問着を仕立て直すことで、新たな命を吹き込み、現代の暮らしに寄り添う一枚へと甦らせることができます。 着物は仕立て直しを前提とした服です。思い出をまとうことも可能です。 また、お気に入りをネットで見つけたら袖を通してみたくなりませんか? アンティーク訪問着。サイズ直しをすれば、現代の体型にも合わせて再び美しく着られます アンティーク訪問着の魅力とは 現代の色にはない柔らかいグレイッシュな色味が最大の特徴です。染料からして異なるので光の下にでたとき、違いが顕著にみられます。 唯一無二の柄や色彩 アンティーク着物は、現代ではなかなか見られない染めや織り、独特の色合いが魅力です。特に訪問着は、格を保ちつつも華やかさを演出できるため、フォーマルな場でも存在感を放ちます。 裄直しの様子。縫い代を確認しながら丁寧に仕立て直していきます...

Hamanaka Akiko
2025年10月2日読了時間: 3分
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